松本文庫

概要

松本文庫は旧制第八高等学校教授松本亦一氏の旧蔵書であり、昭和二十九年一月、当時鹿児島在住の長男述之氏の手によって本学附属図書館に寄贈されたものである。蔵書の内容は旧蔵者の履歴が物語る如く漢籍、漢方の医書が大半をしめ、その学識と研讃の姿勢を偲ぶことができる。その中には数々の得がたい書冊も含まれている。

蔵書は保存するのみでなく活用されてこそ価値がある。ただ特殊文庫にあっては目録がないと利用はきわめてむつかしい。松本文庫は入架以来、幾度か整理・目録作成の話も出、昭和四十六年高橋均助教授(当時教育学部漢文学)により一部着手されたこともあったが、ほぼ時を同じくして入架した他の特殊文庫(玉里文庫、岩元文庫等)の整理・目録作成が先行し、種々の事情により遷延、久しく活用の途が閉ざされたままであったのは残念なことであった。しかるにこの度本学大谷敏夫教授(法文学部東洋史学)・松浦茂助教授(同)・下定雅弘助教授(同中国文学)・大野修作助教授(教養部 同)らの積極的、全面的な尽力によって目録作業が完了し刊行をみるに至ったことは喜びにたえない。ここに関係者各位の御厚意に対し深甚な謝意を表したい。願わくば旧蔵者の芳志にこたえるためにも本目録が学内外の研究者の利用に供され、本文庫が将来ともに研究・教育資料として活用されることを念じてやまない。

昭和五十九年八月

鹿児島大学附属図書館長

五味克夫